日本財団 図書館


 

Table 1. Physical characteristics of subjects.

189-1.gif

 

肥満は、過剰に脂肪が蓄積した状態であると定義されており18)、そのため糖・脂質系代謝異常を起こしやすく多くの成人病の危険因子として知られている23、28)。肥満の発生には先天的因子と後天的因子、すなわち環境的要因、例えば日常生活での運動不足や食事の過剰摂取、偏食などが関係する。
一般に肥満者の減量対策として、運動療法により消費カロリーを増やすか、食事療法により摂取カロリーを減少させるかの2つの方法が行なわれてきた21、22)。また、減食だけによる減量は、体重減少という点からみると効果的ではあるが13)、健康および体力の維持という点からは適切でないといわれてきた22)。そのため、身体の活性組織量(除脂肪体重)を維持しながら、体脂肪だけを減少させるには、減食と運動を同時に処方する方法が望ましいとされている14、26)。
しかし、高度な肥満者の場合、日常生活において減食と運動を同時に組み合わせて実施することは、食事の管理や運動量の規定が難しく、その効果を実証することは容易ではない6、9)。また、通常運動経験の乏しい肥満者に急激に運動を実施させると過多の体重による整形外科的疾患を誘発する可能性が考えられる7)。さらに、これまでの食習慣や運動などの生活習慣を短期間で急変させることは、継続が困難なだけでなく、筋量の低下や減量後のリバウンドが大きいといわれている。
そこで、本研究では比較的長期にわたり高度肥満者を対象に、はじめの4ヵ月間は食事変容プログラムを課し、減食のみで体重を低下させ、その後減食を続けながら日常生活で取り入れやすい程度の運動をさらに4ヵ月間行なわせることにより、身体組成と体力の変化と血液生化学的指標との関係を検討することを目的とした。

 

研究方法

1. 被験者

被験者は、健康で月経周期が正常であり、BMI(Body Mass Index:体重(kg)/身長(m)2)が26.0以上の女性8名であった。彼女らの身体的特徴を表1に示した。年齢、身長および体重は、それぞれ49.1士7.4歳、155.7±7.7cmおよび72−77土8.71kgであり、BMIは30.0±3.4であった。また、上腕背部と肩甲骨下角部の2部位から求めた体脂肪率は3116)、35.6±3.8%であった。これらの値をもとに体脂肪量と除脂肪体重(LBM:LeanBody Mass)を算出した。

2. 摂取エネルギーの制限

本研究では、特にカロリーを規定した“特別食”を提供したわけではなく日常での食事を一部変更させる「食事変容プログラム」7)を実施させた。食事変容プログラムの中心コンセプトは、?@禁止、命令を原則として行なわない、?A食事を栄養素とカロリーに分けず“食文化”としてとらえる。したがって食のおいしさ、楽しさを積極的に追及する。その結果として?B夕食中心型である。
その内容は、米飯中心とし朝食に米飯1膳と海藻などのカロリーの少ないおかずを合わせて約250kcal程度摂取するように指示した。昼食はカロリー制限による栄養素の不足を補うために栄養補助食品(80kcal)とスキムミルク(80kcal)を与えた。また、夕食には米飯1膳と穀類を中心とした野菜合わせて約800〜900kcal程度を目安として摂取するよう指示した。その結果、1日の摂取カロリーは1200から1400kcalであった。
これらの食事管理は、被験者が毎日記録した食事記録をもとに2週間ごとに管理栄養士が面接を行ないながら8ヵ月間実施した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION